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2013年7月22日 (月)

ステーキを下町で

ステ一キを下町で
            平松洋子(著)谷口ジロー(画)
 著者の文体にはリズムがあ
る。北海道から沖縄までの
「食する旅」のメニューにふ
れながら、読む側も食後感を
味わうのは、まさにこのリズ
ムのせいだ。鹿児島で「黒し
ゃぶ」の「じわ、じわ、しつ
かりとうまみが湧き出る」風
                              
格を味わう。下北半島で「鮟鱇」

料理を前に、「目がうれ
しがってどこから箸をつけよ
うか迷いに迷う」、その抵抗
感がなんとも楽しい。
 実は本書は、そのような
「食する旅」だけが売りでは
ない。帯広で味わう「豚丼」
を通じて十勝開拓の先達・依
田勉三らの辛苦を偲ぶ。三陸
海岸の「うに弁当」を語りな
がら、被災地への励ましを奥
ゆかしく伝える。京都の「う
どん」を味わいつつ、人の縁
に驚く。東京・下町の肉料理
に父親の思い出が重ね合わさ
れる。
 「食」とは記憶する脳やそ
の場に駆けつける脚力、私た
ちに何かを訴える食材を慈し
む視覚、そして時間と空間を
共有した人たちの織り成すハ
ーモニーでもある。
     保阪正康(評論家)
文芸春秋・1575円
(H25・4・7 朝日新聞ー朝刊ー「読書」所載)

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