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2009年8月 1日 (土)

アメリカのパイを買って帰ろう

新刊食書のご紹介

「アメリカのパイを買って帰ろう」(駒沢 敏器<としき>著・日本経済新聞出版社・定価1785円)

 沖縄の人が本土の沖縄出身者にお土産を買っていくとしたら何を選ぶか。 子どものころからなじみ、沖縄でしか手に入らないものー。

 それは「ジミーのアップルパイ」である、と著者はいう。 アップルパイなど東京や大阪でも買えるだろうに、などと考えてはいけない。 大きく厚くずっしり重く、田舎くさい味のパイ。 沖縄の人にとっては、それが故郷の味なのだ。

 創業者は基地労働者だ。 食堂で働いていた彼は独立してベーカリーを開き、米国風のパイやケーキを売る。 基地での呼び名「ジミー」を店名とした。 それが人々に愛され、チェーン店が増え、やがて沖縄の味になっていったのである。 アメリカの味でも日本の味でもなく。

 沖縄は72年の本土復帰まで27年間、米軍の占領下にあった。 日本から切り離された人々はその間どうしていたか。 彼らは米国の文化を受け入れ、自分流につくり変えて暮したのである。 たとえば豚ひき肉の缶詰「スパム」。 軍の携帯食料だったものをチャンプルー(炒め物)に取り入れ、家庭料理に欠かせない食材にしてしまった。 南米料理タコスを改変し、「タコライス」も生み出した。

 食事だけではない。 基地の建材だったブロックに目をつけ、それで家を建てるようになった。 鉄筋ブロックづくり2階建て3階建てOK、である。 赤瓦平屋建てのゆったりした沖縄風住宅は陰をひそめたが、木材が少なく台風が多い沖縄にブロック住宅はぴったりで、それは新しい建築分野を切りひらいた。

 終戦までは「大和世<やまとうゆ>」があり、そのあと「アメリカ世<あめりかゆ>」が来た。 人々は「時々の支配者」に距離をおき、冷ややかに眺めながら、受け入れるものは受け入れて暮してきた。 それが沖縄なのだ、とこの本は語る。

 沖縄に何回行ったのか書かれていないが、それは数え切れないほど行ったからだろう。 基地反対や本土復帰とかで、しばしば聞かれるタテマエ論。 そこから見えない人々の生き方を、著者は一つ一つの現象で切り取って提示してくる。(評・松本 仁一<ジャーナリスト>)

(H21・6・28 朝日新聞<朝刊>「読書」所載)

 

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投稿: まゆりんちゃん | 2009年8月 1日 (土) 11時08分

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