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2008年7月25日 (金)

食育のススメ

とにかく面白かったこの一冊(各界の読書家に聞く:岸 朝子<食生活ジャーナリスト・84歳>)

「食育のススメ」(黒岩比佐子著・文春新書・定価893円)

 明治36年頃に10万部もの大ベストセラーになった、村井弦斎の『食道楽』(岩波文庫)という小説があります。 大食漢の男性の妻になるヒロイン、兄弟や友人たちのユーモアのある会話が中心になった、面白い作品です。 和洋中600種類以上の料理名が登場し、作り方も細かく紹介されます。

 黒岩比佐子さんの『食育のススメ』は、この小説を現代の視点から解説した書です。 食育とは、国民が食の知識を得たり、食を選択する判断力を身に付けるための取り組みのこと。 『食道楽』にも<体育よりも智育よりも食育が大切>とあり、まさに食育のヒントにあふれているのです。

 つまり『食道楽』の主題は、単なる美食礼賛でなく、明治時代の家庭の食生活改善なのです。 <文明の生活をなさんものは文明の台所を要す> <家庭料理の研究は夫婦和合の一妙薬> <身体の発達も精神の発達も根源は食物にある> <何事にも程と加減を知ることが大事>。 黒岩さんは、この4つの視点から、村井弦斎の先見性を現代に照らし合わせています。

 弦斎は、栄養学もなく、ビタミンも発見されていない時代に、蛋白質や炭水化物など食物の成分分析をしています。 冷蔵庫のない社会で、安全な食品の鮮度などの鑑定法を教示。 西洋料理のフォークやナイフの使い方も説いています。 

 平成17年にようやく、食育基本法という法律ができました。 ただ、食生活がよくなる方向性は、まだ見えていない気がします。 そんな現状に本書は、料理とは自分で学び、きちんと作るものと教えます。 何をどうやって、どう食べるか。 このことさえ知っていれば、様々な食料危機が取り沙汰される現代でも健やかに生きていけるのです。

(2008/7/3 「サライ」ブックレビュー<読む>所載)

 

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コメント

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

投稿: 株の投資 | 2012年8月22日 (水) 17時14分

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